昨日目が覚めたときに大きなめまいがあったのよ…こわかったわ~。
めまいは起こるとその後も起こりそうで不安ですよね。
めまいについて、少し知っておきましょう!
そもそも”めまい”って?
めまいといっても実は大きく3つの分類があります。
- 回転性めまい(vertigo)
- 浮動性めまい(dizziness)
- 前失神(presyncope)
”回転性めまい”は、一般的に言われる「目が回る」「ぐるぐる回転している感覚」を指します。
”浮動性めまい”は、足元がゆらゆらするような、その場でじっとできないようなものを指します。
最後の”前失神”は、言葉のとおり失神しかけ、つまり意識を失いそうな状態で、その直前の症状を指すときに使われます。
それぞれ英語が異なるように、アメリカでははっきりと区別して使われているんです。
めまいを起こす病気は何があるの?
大きく分けて、「中枢性めまい」「末梢性めまい」があります。特に怖いのは「中枢性めまい」に分類されるめまいです。
中枢性めまいを起こす病気
中枢性めまいを起こす頻度は、実はとても低いです。めまい症状全体のうちの10%ほどと報告されています。中枢性めまいの特徴は、めまい以外の症状が一緒に出現する、という点です。
たとえば、
- 激しい頭痛
- ろれつが回らない
- 意識がなくなる
- 手足のしびれ
こういった症状が一緒に出ている場合は、早めの病院受診をおすすめします。
以下のような疾患で中枢性めまいを起こします。
脳卒中(急性脳血管障害)
脳の中でもバランス感覚をつかさどる部位が「小脳」です。
たとえばここに向かう血管(前下小脳動脈や後下小脳動脈)が閉塞、つまり小脳梗塞を起こしてしまうと、めまい症状が出てきます。小脳梗塞など脳卒中によるめまいは、かなり強いめまいと言われています。
脳腫瘍によるめまい
脳腫瘍は先ほどお話しした小脳周辺を少しずつ圧排することで、めまい症状が出現してきます。そのためそれほどめまい症状自体は強くないのですが、浮動性めまいが長期間にわたって出てくることがあります。この中で多いのは良性の「聴神経鞘腫」という腫瘍です。初期では難聴をきたしますが、徐々に大きくなるとめまいも合併することがあります。
めまいって怖い病気が隠れているのね。心配だわ…。
中枢性めまいは怖いものが多いけど、頻度は少ないよ!
圧倒的に多いのは、以下の末梢性めまいです!
末梢性めまいを起こす病気
末梢性めまいはなんと全体の70%近くを占めます。その中でも最も多いのが、「良性発作性頭位めまい症」です。また、皆さんも聞いたことがあるかもしれない「メニエール病」も、この末梢性めまいに分類されます。それでは、それぞれの病気について詳しく見てみましょう。
良性発作性頭位めまい症
めまい症状の中で最も原因として多いのがこの病気です。
耳の中の「内耳」と呼ばれるところに、「三半規管」と呼ばれる3つのリングがくっついた構造物があります。この中には内リンパと呼ばれる液体が詰まっており、頭を動かすことでその液体が流れ、自分が「どっちに頭を動かしているのか、どれくらいの角度動いているのか」を判断しています。この三半規管の中に耳石器と呼ばれる耳石が集まっている場所があるのですが、この耳石が誤って三半規管のリングの中に落ち込んでしまうと、液体の重さが変わり、少し頭を動かしただけでも、通常より大きく頭を動かしたような指令が脳に行き、結果としてめまいと認識してしまう、という原理です。この良性発作性頭位めまい症の特徴は、
- ある特定の頭の向きでめまいが誘発される
- めまいが起こった体勢でじっとしていると10秒~1分程度でめまいが治まる
- 何回も同じ体勢をとっているとめまいの強さが弱くなる
などです。
良性発作性頭位めまい症の治療は、端的に言えば「抗めまい薬を飲んで、しっかり目と頭を動かそう」です。「めまいが起きてるのに動けないよ…」と思いますよね。実際に私が診療しているときも、患者さんはみんなそうおっしゃいます。
しかし、先ほどのめまいの原理のとおり、耳石が三半規管から元の位置に戻らないと、めまいは落ち着きません。「めまいが落ち着くまで横になって寝ていよう」だとなかなか治らないのです。
めまいを治す運動は大きく2つ!
- 目を動かす運動
- 頭を動かす運動
目を動かす運動は、顔の前30cmのところに左右どちらかの手の親指を挙げて、それを見ます。最初は顔を動かさずに腕を左右に動かし、それを目で追う練習。慣れてくれば、今度は腕は固定したままで、首を左右にゆっくり振り、目は指を見続ける運動。
続いて頭を動かす運動です。ベッドや布団などに横になり、仰向けになります(めまいが強いとこの段階で目が回るかもしれませんが、数十秒でめまいは落ち着いてきます)。仰向けの状態から首を左右にゆっくり、片方につき15秒ほどかけて首を振ります。次は仰向けの状態から上半身を起こし15秒待ちます。15秒ほど経ったら。また仰向けの体勢になります。
これらの運動を1日3セット、朝昼晩と行うことで、耳石が移動し、通常よりはやくめまい症状が改善してきやすいです。
ただこの運動だけだとめまいが強くて気分が悪くなりますので、耳鼻咽喉科を受診して、めまいを抑える薬などを処方してもらいましょう。
メニエール病
めまい症状があり、内科を受診して「メニエール病ですね。」と言われたことはありませんか?私の外来にも、メニエール病と診断されたことがある、と言われる患者さんがときどき受診されます。もちろん、本当にメニエール病のこともありますが、大半は一時的な良性発作性頭位めまい症やそれ以外のめまいであることが多いです。というのも、メニエール病の特徴は、
- 誘因のない難聴、耳鳴り、めまいが反復して起こる
- めまいは1時間から数日つづく
こととされています。この反復して、つまり繰り返し何度も起こることが重要で、たとえば「今まで1回だけ2~3日続いた」や「おおきいめまいだった」だけではメニエール病と診断できないのです。
まずはめまいが起こったときは耳鼻咽喉科を受診して、先生と一緒に今後も起こらないか経過を見ていきましょう。
突発性難聴に伴うめまい
なんの前触れもなく、突然耳の聞こえが悪くなる病気を突発性難聴といいますが、実は突発性難聴でもめまいが起こることがあります。特に急激に強い聴力低下をきたすようなものに、合併して起こりやすいです。同時に起こることも、遅れてめまいが出てくることもあります。
この場合、突発性難聴に対して早めに治療する必要があります。突発性難聴の治療は、最初の1週間はいつ治療しても治療効果は変わらないといわれていますが、1週間以上経過すると、時間が経つごとに治療効果が薄れていくため、はやめに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
前庭神経炎
先ほど内耳には三半規管があるとお話ししました。この三半規管が得たバランスの情報を脳に伝えるためのケーブルが、前庭神経です。この前庭神経がショートを起こしてしまうと、脳に適切なバランスの情報が伝達できずに、めまいを起こしてしまいます。これを前庭神経炎といいます。ショート、つまり炎症を起こしてしまう原因としては風邪が多いといわれていますが、原因がわからないことも多いです。この前庭神経炎の特徴は、
- 誘因なくめまいが起こり始める。
- 起こり始めると1週間近くずっとめまいがしている。
ことです。なってしまうと症状が持続しますので、抗めまい薬を飲みながら、必要であれば入院で治療します。
持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)
近年注目を集めているめまいを起こす病気です。これまで、症状がありながらも原因がわからないめまいというのが存在していました。それらの約4割ほどがこの病気に当てはまるのではとされています。特徴として、
- 3か月以上つづくめまい
- 視覚刺激や乗り物などの体が揺れる状況でふわふわした症状が悪化する
が挙げられます。
2017年に国際学会で新たに提唱されたもので、先述の病気やうつ病のような精神疾患とも異なるものです。原因は、それまでのめまい疾患(良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎など)や精神的ストレスによって、心身のバランスが乱れることといわれています。
そのバランスの維持のため、視覚情報や体性感覚(体の芯のバランス)に過剰に頼ることになり、スマホ画面のスクロールやトンネルを運転しているときなどの視覚刺激、歩いたり電車に乗ったりする刺激などでふらつきを生じてしまいます。
今のところ、うつ病などに用いる抗不安薬を少量から内服することや、めまいのリハビリをすることで、症状が改善するといった報告があります。
その他、めまいを起こす病気
今までお話ししたもの以外にも、めまいを起こす病気はたくさんあります。
- 起立性低血圧(いわゆる自律神経失調症)
- 貧血
- 不整脈
- 脱水症
- 頭部外傷後
- 乗り物酔い
- 心因性めまい etc.
などなど…。今回は頻度の多いものをメインでお話ししましたが、気になる病気などがあれば、そちらについても別の機会に取り上げようと思います。
めまいを起こす病気はたくさんあります。
症状で気になる場合は耳鼻咽喉科を受診してみましょう!
twitterで病気のことや最近の出来事についてつぶやいています。
もしよろしければ、フォローよろしくお願いします。
コメント