においの種類で動くものがゆっくり見える⁉

医学雑談

クロスモーダル現象とは

みなさんは腹話術をご存じでしょうか。

これは聴覚情報として腹話術師から声が発せられているにもかかわらず、視覚情報としての人形の口の動きを見ることで、聴覚より視覚によってより確からしい位置情報に置き換わることで起こる「腹話術効果」といわれるものが影響しています。

実際は腹話術師がしゃべっているのに、まるで腹話術師が持った人形がしゃべっているかのように感じることがあると思います。

また、実際の重さは一緒でも、大きさが小さいもののほうが重く感じるという現象は「大きさ‐重さ錯覚」といいます。

これらに共通していることは、視覚と聴覚、視覚と触覚といった、異なる情報や感覚が入ることで、もう一方の情報が変化するという現象です。

この現象を”クロスモーダル現象”といいます。

変化する、というネガティブなイメージを持ちそうですが、例えばテレビを見ているとき、音はスピーカーから聞こえてくるものの、まるでテレビの中の司会者や俳優がしゃべっているように聞こえる。

これも視覚情報と位置情報のクロスモーダル現象です。

このクロスモーダル現象について、最近おもしろい報告がありました。

においの種類で見えるものの速さが変わる?

2021年8月、情報通信研究機構(NICT)からにおいの種類でものの動く速さが変わって見えるという報告が発表されました。

レモンまたはバニラの香り、さらに無臭の空気を1秒間ずつ噴射した後、白く動く点(モーションドット)の速さを回答してもらう、という実験です。香りの強さはレモン、バニラがそれぞれ50%、100%の各2段階、モーションドットの速さは7段階あり、被験者は計525回、その実験を行いました。

出典:情報通信研究機構

この結果、モーションドットが同じ速さで動いていてもレモンの香りを嗅いだときは遅く、バニラの香りを嗅いだときは早く感じることが明らかとななりました。

この実験の際にMRIという画像検査を行い、脳の活動を調べたところ、視覚情報の動きにかかわる脳の視覚野であるhMTといわれる部位と、最も初期に視覚情報を処理する視覚野であるV1の脳の活動が、香りによって変わることを発見したのです。

このクロスモーダル現象は「視覚-嗅覚」のクロスモーダル現象ですが、これを発見したのは今回が初めてとなります。

例えば、メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手にレモンの香りがするガムを噛んでもらいながらバッティングをするのと、バニラの香りがするガムを噛んでもらいながらとでは、ホームランの数にも影響してくるかもしれませんね。

いかがでしたでしょうか。

あまり聞きなれない現象と思いますが、人体にはまだまだ知られていない現象が眠っていそうですね。

たけちゃん先生
たけちゃん先生

たけちゃん先生はレモンよりすだち派です。

twitterで病気のことや最近の出来事についてつぶやいています。

もしよろしければフォローお願いします。

コメント

タイトルとURLをコピーしました